プリーツの種類について

 学生服のコーナーに「24本車ヒダ」とか「24本前箱ヒダ」とか「ボックスプリーツ」とか書いてあるけど、違いがよく分からないというメールをいただいたため、プリーツについて説明するぺージを、ここに作りました。

 学生服は濃い紺色なので、写真ではなかなかプリーツ(縦ヒダ)の形状まで分かりづらいし、ふだん、街で女子高生を見るときも、プリーツの向きや本数、形状などは、あまり気にしていないのではないのが一般的かと思います。でも、セーラー服のスカートとブレザーのスカートでは何かイメージが違うな、というぐらいは、気付いている方も多いのではないでしょうか?
 そう、一般的に、セーラー服は車ヒダのスカートが多く、ブレザーはボックスプリーツ(箱ヒダ)のスカートが多いのです!

※このページは、かなり昔(多分2000年の夏頃)に作ったものだったのですが、2006年の夏に久しぶりの加筆を入れました。



※このページの文章およびイラストは、私(Wonder Rabbitの店主)今まで扱ってきた制服関係の知識をもとに、独自に書き下ろした文章です。内容は、私の知る限りで出来るだけ正確にあるように心がけたつもりですが、服飾の学校で学んだ専門家等ではありまんので、言葉の使い方その他にミスがあるかも知れません。そっくりの文章を自社商品の説明用として掲載している同業者さん、そういうのはご遠慮くださいね(もし、このページの内容に間違いがあった場合、間違いまでそのまま掲載することになってしまいますから、恥ずかしいですよ〜)。
※出元がWonder Rabbitのこのページであることが分かるように明記していただければ、制服研究・服飾評論等の内容のインターネットページ・研究レポート・同人誌等に内容を「引用」いただくことについては、特に問題はありません。
※以下、断面図は、正面図の左右と同じになるような位置関係で、「下から見たとき」の図で記載しています(上から見ると方向が逆になりますが、説明文は上から見た場合で書いてあることもありますので、ご注意ください)。



 図1は、車ヒダの基本型です(送りヒダということもあります)。片側に倒れるような形でプリーツが重なって続いていて、一周回ると元に戻る形です。一般に、車ヒダは人体を上から見たとき、反時計周り(左回り)になるようにヒダが送られています。
なぜ、この向きなのか。日本の女性用スカートで横開きの場合、一般的に左横にファスナーがついていて前側が上にくる形で重なるのですが、ヒダはその方向と合致しているわけです。
※参考までに、車ヒダのスカートのポケットは、着用者左側に来ます。右側は、プリーツが前に向かって倒れているから、ポケットに右手を入れようとしても逆方向になってしまうためです。
※蛇足ですが、なぜか中国で作った(あるいは衣装のことを良く分かっていない素人さんの作った)プリーツスカートは、逆プリーツで右開きになっていたりすることがあります…。あと、男性漫画家が描くプリーツスカートも、たまに逆プリーツになっていることがありますね。

24本車ヒダの写真例20本車ヒダの写真例

 図2は、ボックスプリーツ(箱ヒダ)の例です。車ヒダとの違いは、片側にだけプリーツがあるのではなく、両側に線対称にプリーツがあって、それで1つの箱型になっているからです。これは、あくまでもボックスプリーツのひとつの例にすぎず、ボックスは色々な形があります(図4,5なども参照してください)。図2では、外と内の段差がある形で描いていますが、正面から見たときにはこれと似た見た目で、外側と同じ高さにもう一回折り返して戻ってきている形だと「4本ボックス」と言います。(横の段差がない形のほうが、もしかしたら一般的なのかも知れません…。図と同じ形のプリーツの学校も見たことがあるのですが、このプリーツを何と呼ぶのか、まだ私も不勉強でよくわかっていません…。)

4本ボックスの写真(※正面からの見た目は図2と似ていますが、断面が実は違う別の形です)


 図3は、これもセーラー服にありがちなプリーツの形状です「前箱(×本)ヒダ」とかそういう言い方をされていることが多いです。
図1の車ヒダと一見似ているのですが、よく見ると一番前が箱ヒダで、そこから先が後ろに向かって車ヒダになっている、いわば複合系(?)であることが分かります。後ろ側の図がありませんが、後ろは、回ってきたヒダが突き合わせで終わっています(図5の説明も合わせてご覧ください)。某メーカーの資料によれば「前箱ヒダ24本」と表現されていましたが、このタイプを「車ヒダ」と表現している学生服業者もあるようです。
※前箱24本の場合、24本車ヒダと違って、ポケットは着用者右側に来ます。右のプリーツが後ろに向かって倒れているので、右側からでも手を入れられるからです。普通、衣装に片側にだけポケットをつける場合、右につけることが多いです(利き手が右手だから?)
※ちなみに、K020121夏用セーラー服上下セットの制服業者さんは「(スカートは)車ヒダか箱ヒダの2種類があります」というアバウトな表現をしていましたが、普通「箱ヒダ」とだけ言うと、図2とか図4とか(もしかすると図5も?)も含まれてしまうのでは?…とか思いました。間違えないためには、「前箱×本プリーツ」とか、そういう言い方が無難かも知れません。

前箱24本スカートの写真例

 図4、これもボックスプリーツの一例です。前2本ボックスとか表現しているみたいです。でも、同じ前2本ボックスでも、この図のように、2つボックスが出っ張っている状態のもの(内側にできるボックスが1つのもの)と、その横にもう1本づつプリーツが入って、外側の高さにあうような形状のもの(つまり、前側だけを見た場合、内側に3つのボックスができるタイプ)があります。後者のほうが、もしかすると一般的かも知れませんね。
※上記説明の後者のタイプ(前後共に同じようにボックスがくるタイプ)を、「6本ボックス」と言うみたいです(確かに、ぐるっと1周数えると6本です)。ちなみに、私が通っていた学校は図4が前後ともにある形で、これを「4本ボックス」と呼んでいましたが、業者の定義だと4本ボックスというのは、外側も内側もボックスが4つ(図2の項目参照)の形ということになりますね…。たまには、正面からの見た目は図4のような感じで、両脇にプリーツの突き合わせ部分が来るデザインのものもあったりして、そういうのは「何本ボックス」と数えるのかしら?? うーむ、ボックスプリーツの数え方というか呼び方は色々な流儀がありそうで、複雑です。


 図5は、これもボックスプリーツの一種です。前からみると、縦線一本しか見えません。内側にボックスが出来ているケースです。服飾用語辞典を見ると、このタイプを「インバーテッドプリーツ」とも言うみたいです。婦警さんのスカートのイメージがありますが、学生スカートでも稀に見かける形です。これは、図2のタイプの逆転みたく見えますが、図2の場合、内側のヒダ同士が付き合わさっていない(ボックスの幅が広い)ことが多いようです。
※ちなみに、図3のタイプのスカートの場合、図では正面からしか書いてありませんが前から後ろに流れるように送りヒダになっていますので、後ろから見た場合、中央に向かってプリーツが寄っていく形になります。そして、一番最後のヒダは、ちょうどこの図4の1本のように突き合わさって終わります。


 ちょっと話は学生服からそれますが、図6のように、 巫女衣装の袴も縦にヒダが入っています(プリーツと洋風に呼んでいいかどうかは不明ですが…)。巫女の袴の場合、前後共に、内側に向かって送りヒダになっています(そのせいで、一見、股のある袴のように見えてしまいます。巫女の袴にも股のあるタイプと、股の無いタイプがあるようですが、当店で販売している品は股のないスカートのような型です)。
※巫女と女学生袴では、ヒダの寄り方(重ね方?)が違います。女学生袴のほうがちょっと複雑で、左右対称ではないです。


 更に更に蛇足ですが、某ウエイトレス衣装、イラストだとなぜかギャザー(ひらひらのヒダヒダ)で描かれてしまうことが多いようですが、これ実は、送りヒダになっています。下まで筋がしっかりついているわけではないので、厳密にはプリーツとは言えないのかも知れませんが、根元の部分は、学生服の車ヒダのように片側方向に畳んで送っているのです。



 以上、駆け足でお届けしたプリーツ速習講座でしたが、いかがだったでしょうか?

 私自身、服飾学校で専門的に学んだとかではないので、ここに書いた内容が絶対に正しいとか、言葉(表現)が適切であるとか、そういう保証はできませんが、だいたいこの程度の用語で業者さんと会話していて、とりあえず最小限のコミュニケーションは取れているみたいです(笑)
 もし、もっと専門用語とかご存知の方がいたら、あるいはこちらの勘違いしている表現などがあったら、是非、教えていただけると幸いです。

 また、今回のプリーツのように、衣装を扱いなれている者から見ると「日常用語」と思い込んでいる言葉が、お客様(一般の皆さん)から見ると「用語が難しくて、商品の形が分かりづらい」ということもあるかと思います。商品の色や柄など直接的な質問以外でも、何か説明文の中で分かりづらい言葉とか表現がありましたら、是非メールにてお問い合わせください!
(知識系の問い合わせの場合、対応にお時間を頂戴するケースもあります。また、いただいたご質問は、コンテンツ充実のために、ご質問者を特定しない形でQ&Aのような形でサイトに掲載させていただくこともございます。)




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